テレビ東京を見直す

 高橋弘樹『TVディレクターの演出術』(ちくま新書)を読む。
 どうせ、ヤラセは悪くないだの、おもしろければなんでもOK、とかいうような、浅はかで露悪的な自慢話を聞かされるのだろうと期待せずに手に取ったら、まったくちがっていた。なにしろ著者はTVディレクターでありながら、「大抵のテレビ番組が嫌い」と書き、「AKB48に会ったことすらない」というのである。
 著者が手がけるのは、タレントがほとんど出ない、金のかかっていない「手作り番組」。「空から日本を見てみよう」とか「ジョージ・ポットマンの平成史」とか。なんと自分で取材して、台本も書き、カメラを回して、編集までやるのである。そのリサーチたるや、学者顔負けである。
 テレビ局員といえば、コネ入社で他人のキャッシュカードを盗んだり、猿の首に釣り糸を巻きつけてラジコンを追いかけさせたり、番組制作費をごまかして約1億4千万円を横領するようなやつばかりであるが、まともな人が一人はいる。テレビ東京に。