バカにしつつホメる

 サブカル評論に特徴的なのは、バカにしつつホメるという態度である。本心では「あんな、くだらねえものを」と思っていながら、「そこがいいのだ」という調子でホメるのである。こういう、ねじれ具合といい、屈折のしかたは、おれも育ちがサブカルなんでよくわかるし、おれも多分にそういうところがある。しかし今はもう、こういう態度にはうんざりである。
 たしか岡田斗司夫の「オタク学入門」だったか、ウルトラマンだとか戦隊ものだとか、大人になってもなおそういう子供じみた趣味から抜け出せないまま夢中になっている人たちがいて、しかしそれを肯定して、幼稚なものをあえて真剣に論じてみる態度、というのがオタクなのだと指摘していて、おそらくこういうものから「バカにしつつホメる」という評論のスタイルが生まれたのだろうと思っていた。
 とはいえ、蓮實重彦の「凡庸な芸術家の肖像」や吉本隆明の「マス・イメージ論」なんかもこの手合いだったし、もっと前からあるのだろう。淀川長治はどんな駄作でも決してけなさずに、いいところを探してホメたというんだが、ホメるところがないと主人公の胸毛をホメたというんだが、これなんかもバカにしつつホメるという態度であり、「映画秘宝」と同じでまったく品がない。