紅白のユーミン

 去年2ちゃんねるで「浜崎あゆみ京唄子化」というスレに笑ったけど、紅白のユーミンは「美空ひばり化」であった。むかし近田春夫ユーミンに、「美空ひばりの後を継げるのはあなたしかいない」ということを言ったら、露骨にいやな顔された、というエピソードを覚えている者からすると、なんだか感慨深い。
 歌が下手ということだったが、もともとあんなものである。年間に何十本もコンサートをやって、還暦も近づけばあんな声になる。しかし後半の「春よ来い」の合唱は、悪い意味で鳥肌が立った。ユーミンがこんなダサい演出で歌うとは。冗談だと言ってほしい。
 おかしいな、おれ。べっ、べつにユーミンなんか好きでもなかったのに。
 ネットではユーミン語録というので「私の歌は商業高校とかに行ってるコには聞いて欲しくない」というのが広まっているけど、これは微妙にちがう。この発言を発掘したのは『80年代の正体』(別冊宝島)の執筆者だった大月隆寛である。ユーミンのインタビューでの発言として、私の歌の恋愛観は暴走族や商業高校の女の子にはわからない、という意味だったはずだ。この前段階としてユーミンが通っていた立教女学院とかの私立の女子高の文化みたいなのがあって、私の歌にはそういうキリスト教系の女子高の文化が背景にあるから、という話でくだんの発言に続く。つまりは私立の女子高生と、暴走族とつきあうような商業高校生じゃ、恋愛観がちがうわよね、という当たり前のことを言っているに過ぎない。まあ、差別ではあるが。
 これを田中康夫が『神なき国のガリバー』(扶桑社)の中で、"「商業高校の子には聴いてほしくない」と語っていた松任谷由実の苦悩"と小見出しに使い、それが広まったのではないか。同書では、”「商業高校へ行ってるような子には聴いてほしくない」と幾度となく僕に語った記憶がある(P116)”と書かれてあるので、これはその通りの意味に受け取られてもしょうがない。しかし発言の真意は、前述のようなものであると思う。『80年代の正体』が手元になくて、記憶で書いているので、気になった人は検証してほしい。
 これは余談であるが、ユーミンがラジオで「キャバスケ」というので何のことかと思ったらキャバレーのホステスをそう呼んでバカにしているのだった。八王子の呉服屋の娘がどれほどえらいのか知らぬが、品性下劣である。

80年代の正体 (別冊 宝島)

80年代の正体 (別冊 宝島)

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