無防備すぐる

 市井昌秀監督の『無防備』を見る。不愉快な映画だった。二人の女が出てきて、一人は夫との仲が冷え切って不幸である。もう一人は出産間近で幸福である。こうした人物の描き方がどれもステレオタイプで、うんざりする。それで不幸な女は自殺しようとするのだが、妊婦に止められる。すると妊婦は産気づいて、不幸な女が車で病院に運び、赤ちゃんが産まれる。それを見た不幸な女は、生命の尊さに気づく。まったくもって感動の押し売りである。
 この映画が話題を集めたのは、その出産シーンを無修正で撮っているからである。演じているのは監督の妻だという。小便をするシーンもある。よくやるものだ。気の毒になった。
 出産は崇高なものだとしても、それを撮影し公開することは崇高か。性器をさらせば、それはポルノである。そのうち殺人や自殺を撮るだろう。もはや映画ではない。ドキュン家族のホームビデオである。

無防備 [DVD]

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