最悪の家族

教授「みんな、NHKの『スタンフォード白熱教室』は見てるわね。ブレーンストーミングのやり方はもうわかったでしょ。第三回目の課題は、『最悪の家族旅行を考える』でした。最悪とも言うべき極端なアイデアの中にこそ、常識を覆す創造の種が内包されているのよ。では、それに習ってさっそくやってみましょう。課題は『最悪の家族を考える』です。はい、スタート」
ナタリー「ママが子供を虐待している」
ミラ「fuck！」
リンダ「朝７時から１５時までひっぱたきまくり、朝食も昼食も与えないの」
マーク「それを子供の顔写真つきでブログに書いている」
ジョン「その子供は男の子？」
ナタリー「そうよ」
キャシー「パパはいないの。ママは16歳で劇団に入って、その劇団の23歳上の主宰者と同棲してたけど、別れて妻子ある男性と不倫して子供を産んだ」
ミラ「ママは、12回も堕胎してる」
キャシー「家事は家政婦に任せて、ママは若い男と旅行にいく」
ジョン「bitch！」
バーバラ「ママは在日。それで自分も子供の頃に、親から鼻の骨を骨折するくらい虐待されてた」
トビー「虐待の世代間連鎖だ」
ミラ「長谷川博一のカウンセリングを受けているっていうの、どうかしら」
ジョン「いいね、そのことをママは本にする。東ちづるみたいに」
リンダ「NHKに取材させるっていうのは？」
トビー「そうだね、NHKスペシャルがいい。『虐待カウンセリング』というタイトルで」
ナタリー「子供は、肥満児ね」
マーク「アマチュア無線を覚えるんだけど、それで海上保安庁にイタズラで、誰かが遭難してるって通報して、救助艇とヘリコプターを出動させる」
リンダ「それでママが激怒して、また虐待して、そのことをブログに書くんでしょ。顔写真つきで」
キャシー「完全に、いかれてるわ」
柳美里「呼んだ？」

柳美里不幸全記録