デマとは何か

 原発事故である。いろんな情報が乱れ飛んでいるが、どれを信じていいのか、さっぱりわからない。
 危険厨も安全厨も、どちらも信用できない。原発の専門家でもない者たちが、なぜこうも情報発信をしたがるのか。 菅直人の「僕はものすごく原子力に詳しい」という発言を、笑えるか。「ものすごく原子力に詳しい」人であっても、いまの福島原発の正確な状況は誰も知らない。専門家などというが、水俣病の時だって御用学者というのがいて、こいつらは政府や企業べったりの発言をするのである。
 さらに、こちらに原発事故についての知識がないものだから、誰の言葉が正しいのか判断できない。『AERA』は「放射能がくる」と書いている。
 荻上チキというのが、ブログとTwitterでデマを集めて、「震災に関するデマにご注意ください」と呼びかけている。しかし、「○○○はデマです」と広めることは、「○○○」という情報を広めることでもある。おれも彼のブログを読んで、神田うのに関するデマを初めて知った。しかし、そんなデマはどうでもいい。原発はどうなのか。
 宮台真司は、Twitterで次のように書いている。

科学技術庁長官が、今回の原発事故について「東電と政府の情報を絶対に信じてはいけない。信じたら大変なことになる」と個人的に打ち明けた。ご参考までに。なお、それをどう解釈するかは、皆さんの問題。

 はたしてこれはデマなのか。荻上チキは言及していない。神田うのより、よほど重要であるにもかかわらず。
 そもそも、ある情報をデマだと言い切ることのできる荻上チキとは何者なのか。そんなにえらい人なのか。ものすごい判断能力のある人物なのか。森羅万象の真偽を見極めた人なのか。そうではあるまい。
 バカげたデマを、デマだと判断することなど、誰にでもできる。そう思ってくだんのブログを読むと、そこに集められたデマだという情報のほとんどは、なるほどデマである。こんなものは常識で判断できる。
 しかし世の中には常識のない人もいて、おれおれ詐欺にもいまだに引っかかっている。しかしそういう人はネットでいくら注意を喚起しても、やっぱりだまされるだろう。
 そもそもネットでいくら呼びかけても、被災者には届かない。また一般大衆は、荻上チキという得体の知れない軽薄な若手ライターの言葉など信用しない。「○○○はデマです」と書いてあれば、デマだと知りつつも「○○○」という情報を広めるだろう。荻上チキなんかをありがたがる知性は、震災デマにはだまされないだろうが、別のものにだまされているのだ。
 そしてデマの根拠として挙げられているソースが、政府や企業の発表であり、専門家の意見である。だが、先にも書いたように、政府や企業や専門家が信用できないとしたらどうか。原発は安全だというのが、デマでないことを祈る。