小劇場というタコツボ

 去年見た芝居の中で一番よかったのは、演劇企画集団THE・ガジラの『さよなら渓谷』だった。秋田県で起きた連続児童殺人事件をモデルとしたもので、吉田修一の原作がある。出演者は五人だけだが、緊張感に満ちた演出で、腹の底にずしっときた。犯人役の若い美人の女優も素晴らしかった。
 会場は満席とのことだったが、それでもキャパ100人ほどである。それで芝居が終わったあと新宿駅まで歩いた。そこでの人ごみを見たら、小劇場というのは、ほんとに小さく狭い世界だと思った。DVDになるわけでもなく、見た人しかわからない。
 それでいて劇団は多くて、毎日公演があり、ただでさえ少ない観客を奪い合っている。でもタコツボ化してるよなあ。おれなんかわりと寛容な方で招待券くれるなら何だって観にいくけど、それでもキャラメルボックスが好きとかいう人とは、まったく話が合わない。