庶民におもねる

『とくダネ!』の小倉さんというのは、じつに多趣味で、スポーツマンでゴルフもやるしオーディオマニアだし、カメラや楽器のコレクターでもあり、アンティークやヴィンテージにもお詳しい。
それで、おれがついていけるのは映画と音楽の話ぐらいなものなのだが、小倉さんの音楽趣味というのがこれまた幅広く、モーツァルトルチアーノ・パヴァロッティも聴くし、ビートルズキング・クリムゾンポール・アンカも大ファンで、ノラ・ジョーンズもエグザイルも絢香もいいという。そこらの音楽評論家よりたくさん聴いている。それでいておれが小倉さんの音楽評を参考にしたいという気がおきないのはなぜだろうか、ということについて考えてみた。
たぶんそれは、小倉さんがあたりまえのことしか言わないからだと思う。
歌手の経歴とか、レコードを何枚売ったとか、どういう評価をされているとか、そういうのはプレスリリースを読めばわかることです。それでこの企業の出したプレスリリースに書いてあることを、そのまま報道することは、たんなるその企業の宣伝に加担しているに過ぎない。小倉さんのブログを見ると冒頭に「ウィークデー午前8時の小倉智昭のひと言で色々な物が売れたり話題になったりしています」とある。おれなどのひねくれ者はこんなのを読まされると、『とくダネ!』の冒頭でのトークはテレビショッピングみたいなものかよと、うんざりするわけです。
音楽ファンというのは、たいていジャンルごとに好みが分かれていて、オペラのファンはわざわざエグザイルを聴かない。エグザイルのファンはルチアーノ・パヴァロッティを聴いてもわからない。小倉さんのように音楽なら何でも聴くという態度は、それじたい評論家的な聴き方だが、評論家にはたとえ異質なものをそれぞれ評価するにしても、その人固有の評価軸というものがある。で、小倉さんは何を基準に音楽を評価しているのかと考えてみるとたぶん、庶民はこんなの好きでしょ、ヒットしてるもんねえ、といった点を重視しているのではあるまいか。
ヒットしているもの、有名なもの、こうしたものについておけば、とりあえず安泰である。勝ち馬に乗るやつが、勝つのである。そうしてみると、小倉さんの趣味嗜好というのは、庶民がみてもじつにわかりやすいものばかりだ。コレクターとしても、森永卓郎のようにチロルチョコの包み紙なんか集めたりせず、ちゃんと価値の定まったアンティーク・カメラなどを集めている。
しかし価値のあるアンティーク・カメラを集めるのは、金があればできるが、チロルチョコの包み紙に価値を見出すのは本当にそれが好きでないとできない。音楽の趣味にも似たところがある。あらかじめ価値の定まったものに追従するのはたやすいが、何もないところに自分だけの価値を見出すのはむずかしい。
とはいえ、小倉さんはべつに、音楽評論家ではないから、こういう意見は肉屋でサカナを求めるようなものであろう。
そういや、小倉さんは実業家でもあって、いろんな店をやってるんだっけ。でもまあ本業であれだけ稼いでの副業だから、きっと道楽みたいなもので、あんまり商売のことも考えず、本当に自分がうまいと思った料理を贅沢に提供してるんだろうな、なんて思っておりました。
でもまあ、このレポートを読むとやっぱり庶民の気持ちがよくわかる小倉さんなのでした。


中野美奈子が医者と結婚か。やっぱ、落ちつくところに落ちつくんだなあ。これが地元香川のうどん屋の主人と結婚、とかいうんなら、おれの好感度も上がったんだけど。まあ、おれに好感もたれても、何の得もないけど。