ブルークリスマス

今年のクリスマスは忘れてた。もう終わったのか? 気づかなかったなあ。今年のクリスマスっていつもより短かったんじゃねえか。

なんてことを例年書いて、年越しをするわけでありますが。
映画『ブルークリスマス
監督は岡本喜八。というよりもこれは脚本・倉本聰の映画だろうな。
UFOを目撃した人間の血液がなぜか青くなって、その青い血を持った人間を、政府が危険視して、迫害し処刑しようとするお話。
荒唐無稽なSFといえばそうなんだけど、きちんと作られているからわりにおもしろい。でも惜しいんだよなあ、もうちょっと脚本をどうにかすれば、傑作になったのに。
DVDに岡本喜八インタビューが収録されてるんだけど、それによると、倉本聰の脚本に苦労させられたようですなあ。監督としてはいくつかのシーンを削りたかったのだが、倉本聰は自分の脚本の変更を認めない。それで、しょうがなく脚本の通り撮ったと。でまあ、そこまでは言ってなかったが、この映画が失敗したのは脚本家のせいだと。
たしかにこの映画はだらだら長いんですよ。岡本喜八監督ならもっとテンポよく撮れるはずなのに、脚本にどうにもムダが多い。たとえば、倉本聰はリアリズムにこだわるあまりに、血液が青くなる原因を、科学的にもっともらしく説明しようとするわけですね。イカの血液で実験しているシーンとか入れて。でもSFの場合、こうやってリアルに説明すればするほど、逆にうそ臭くなるわけで、こんなもん全部カットして、なんだかわかんないけど血が青くなった、えらいこっちゃ、どないしましょ、でいいわけですよ。しょせんSFなんだから。
それでSFに詳しい人が見れば、この話は、『地球最後の男』だな、とピンと来るわけですよ。吸血鬼が一人か二人のときは迫害されるけど、それが過半数を超えて、ほとんどの人が吸血鬼になってしまったら、それまでの人間中心の価値観はひっくり返る。そういった過去の名作が元ネタとしてあるわけ。
この映画で言うと、血が青い人が少数の時は、「なんかおかしなやつらが増えてきたぞ、あいつらあぶないぞ」、と迫害されるんだけど、じゃあ、その数がどんどん増えていったらどうするよ、赤い血の人間の方が少なくなったら、今度はそれまで迫害していた側が、迫害される立場になるんだぜ……、ということになるはずだが、残念ながらこの映画はそこまでいかない。その寸前で終わっている。
いやこれはSFの設定を借用しただけで、勝野洋竹下景子のメロドラマがメインなのかもしれないが、それでも設定が大仕掛けなわりには、どうも物足りない。
そういうわけで、もっといろんな人の意見を取り入れて、脚本を練り直せばと思うのであるが、まあ倉本聰だから。その頑固さが裏目に出た作品ですね。
これは余談であるが、倉本作品では『うちのホンカン』や『北の国から』にも、UFOが大まじめに登場する。どうもこの時期の倉本聰はどうやら本気でUFOの存在を信じていた節がある。三島由紀夫が『美しい星』で描いた空飛ぶ円盤を信じる家族みたいに、エコロジストになっていった背景にはこうしたオカルティズムがあったのでは、と俺はにらんでいる。
もしも『北の国から』があれほど大ヒットしなかったら、いまごろ倉本聰は、北海道の片隅であやしげな私塾を開いて若者たちを集め、カルトの教祖になっていたかもしれない。


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