功なし名を遂げた人

三谷幸喜は『オケピ!』で、岸田國士戯曲賞を受賞している。その選評を読んでみたんだけど、これがなかなかひどい。
選考委員が7名いるのだが、『オケピ!』を推しているのが野田秀樹別役実。 ほかの評者はネチネチと批判していて、太田省吾にいたっては三谷をまったく無視。これでよく受賞できたものである。
岡部耕大の選評から引用する。(『オケピ!』単行本に挟まれていた冊子及び、白水社公式サイトから)
第45回岸田國士戯曲賞選評(2001年) - 白水社

オケピ!』には乗り気になれなかった。すでに、功なし名を遂げた人であるし、岸田戯曲賞との過去の経緯が蟠りとなった。ただ、対抗馬になる戯曲を一本に絞るほどの力のある戯曲がなかった。選考委員会の流れは『オケピ!』であった。「岸田賞は無名でも勢いのある人がいいのではないか」「なんだか自民党的決着だな」。そんなことを考えていたら選考委員の太田省吾氏から「岡部さんは話を聞いていない」と怒られた。いまでも『オケピ!』には不満が残っている。

「功なし名を遂げた人」と書いている。これが当時の演劇界の三谷評価なのだ。
三谷幸喜もそれを意識しているらしく、『オケピ!』(白水社)のあとがきで次のように書いている。

それに、ここだけの話にして欲しいけど、確か二年ほど前、アングラ以降の現代演劇の流れについて凄く詳しく書いてある、分厚い本が出たじゃないですか。そういう風に見えないかもしれないけど、僕って意外に自分が周囲からどう見られているか結構気になる方なんです。現代演劇の研究家さんは、一体、僕をどう位置付けているのか、楽しみにして読んだんです。そしたらなんと一回も名前が出て来なかった、一回も。あんなに分厚い本なのに。僕の知っている小劇場出身の作家や演出家は、あいつもこいつも出て来るのに、僕については一行も触れてない。そりゃ僕は劇作家じゃないし、演劇の世界にそれほど貢献しているわけじゃない。でも少なくとも毎年コンスタントに新作を発表しているし、お客さんも今のところはそこそこ入っているし、演劇とテレビの世界との橋渡しに関して、結構これは力になっていると、ひそかに自負していたわけですよ。あれはショックだったなあ。そして、ああ、やっぱり、僕のやっていること、やろうとしていることは、演劇の世界では何の意味も持っていないんだなあ、ということを再確認したわけです。そして、よおしこれからも、あいつらには背を向けて、一人で頑張って行こうと心に誓ったわけで。

まあその後は、読売演劇大賞や、芸術選奨の演劇部門で文部科学大臣賞などを受賞するわけですけどね。
ロマンスの神様」を歌ってる動画はおもしろかったんだけど、もう消されてた。以下の動画は音声のみ。

オケピ! The Orchestra Pit 2003 (PARCO劇場DVD)

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