変人になってください

村上龍の『オーディション』という小説がある。
これは三池崇監督で映画化されていて海外での評価が高く、雑誌「TIME」によると、ホラー映画の歴代ベスト25に選ばれております。
しかしまあ、小説のほうは、適当に書いたんじゃないかと思われるもので、たとえば単行本(ぶんか社)では、主人公・青山の経営する会社について、
「社員14人の会社」(7ページ)であったのに、
いつの間にか、
「社員の数が全部で7人の小さな会社」(145ページ)
に変わっていたりする。

これが幻冬舎文庫になると、この部分は修正されていたのだが、べつの箇所ですごい誤植がある。(初版 31〜32ページから引用)

(オーディションの告知を出すのに)
新聞や雑誌は強力だが今回のようなケースには向かない、それではもっとも新しい例えばパソコン通信のようなものはどうかというとそんなものもダメだ、ここに百人いれば百人が嫁さんにしたい、変人にしたいと思うような女の子がパソコン通信だろうがインターネットだろうが電子メールだろうがそういうヒマでもてない男が群がるメディアに興味があると思うか?
地味なようだがオレはFMラジオ局でいこうと思ってるんだ、

「恋人」を、「変人」にまちがえるというのは、昔からよくある笑い話だが、まさか村上龍の本でお目にかかるとは。しかも、単行本ではちゃんと「恋人」なのに、文庫ではなぜか「変人」になっているのだ。
この有名作家の本に、こんな信じられない誤植があるというのも不思議な話だというか、このホラー小説で一番怖いのは、そこかもしれない。