たかが野球、されど戦争

NHK『80歳・決着に挑む・元兵士たちの日米野球

かつて太平洋戦争を戦った日本・アメリカの元兵士達が、ハワイ真珠湾近くの球場で再会し、野球の試合を行った。
平均年齢80歳。
人生の終盤戦を迎え「自分は誰と戦ったのか」
「かつての敵と顔を合わせたい、語り合いたい」
との思いで集まったのだ。

という番組を見ました。
とはいえ、感動の押し売りという気がして、最後まで見れず、途中から教育テレビに変えて、舞台中継、三島由紀夫・作『朱雀家の滅亡』を見ましたけど。
戦争を考えるなら、こちらの方がよかった。

でまあ、元兵士による親善野球ですけど、根底には、キリスト教の「なんじの敵を愛せよ」とか、仏教の「慈悲」とか、そういう教えに通ずるのだろうが、どうも欺瞞があるように思う。

こういう企画が広島や長崎や沖縄で、成立するだろうか。
積年の恨みが野球の試合ごときで雲散霧消するなら、日本も、中国や韓国を相手に、親善サッカーでも卓球大会でもやればどうか。

戦争という「空気」が支配していた時代に生まれ、今また日米親善という「空気」のために、マスコミ向けの、こんな企画に協力させられる老人たちを、憐れむ。

戦時中は軍国主義に洗脳されたといい、戦後は民主主義に洗脳されたと気づかぬまま、楽しげに野球に興じる元気なご老人たちを見ながら、おれはたとえ老いても、ものわかりのよい年寄りにだけは、絶対なるまいと、思う。

嗚呼、ゆきゆきて神軍