NHK80周年記念ドラマ『ハルとナツ』
一体いつのドラマを見てるんだと言われそうだが、古いビデオテープを整理してたら、出てきた。録画していたことさえ忘れていたのだが、見始めると、面白くて。
脚本はあの大御所だが、さすが泉ピン子に「橋田先生」と呼ばせるだけのことはある。とはいえ、あいかわらずの長々とした説明ゼリフで、物語の設定にも盗用の疑いがあるらしく、たしかに、ブラジル移民の波乱に富んだ人生というのは、誰が描いても面白いだろうなとは思います。
昭和9年。
両親とともにブラジルへ渡った姉と、ひとり日本に置き去りにされた妹。互いに出していた手紙は届かないまま、70年の歳月が流れ、姉妹はようやく再会を果たす。
「勝ち組」というのは、本来、終戦後のブラジル日系人社会で、日本は戦争に勝ったと信じていた人々のことをさす言葉。
しかしまあ、当時のブラジル移民というのは、ほんと過酷な生活であったろうと思う。
読売新聞の「移民100年」いう記事によると、ブラジルでは、19世紀末に奴隷制度が廃止され、農園での労働力が不足していた。それによると、
「奴隷の代わりだったんだよ」と日系人の一人は言った。
「一攫千金を夢みてきたのに、あまりに違う」と、各地で雇い主と争議が起きた。
(引用終了)
垣根涼介の『ワイルド・ソウル』は、移民という名の「棄民政策」への復讐を描いた小説。
さて、日本は豊かになり、戦前とは立場が逆になったわけだが、もう17年も前に、西尾幹二は『「労働鎖国」のすすめ』『日本の不安』などにおいて、外国人労働者の受け入れを、次のように問題視していた。
単純労働者の大量受け入れは、差別に慣れていない日本人を、被害者にするよりも、かえって加害者にする。ヒューマンな行為のつもりが、かえってアンヒューマンな結果を生む。
外国人労働者の受け入れが定着すると、平等な日本社会にカーストが形成され、日本人は決して単純労働に従事しなくなる。
低賃金に甘んずる外国人労働者に依存する経済構造が出来上がる。
アジア人が日本で得た利益は、個人の懐に入るだけで、祖国の経済を豊かにすることには結びつかない。かえって祖国の富の格差を拡大する。
日本がアジア諸国の人材を引き抜くことは、その国に必要されている大切な労働力の不足をもたらす危険がある。
こうした危惧は、すべて現実のものになった。
これからは、日本へ働きにきた外国人たちによって、いくつもの「ハルとナツ」の物語が、書かれるだろう。