バカのための司馬遼太郎入門

図書館にて。
やけに声がでかいオッサンが来て、受付で、「司馬遼太郎先生の『坂の上の雲』という本は、ありますか」と尋ねている。
若い女性司書が、そのオッサンを案内して、書架まで来る。
「テレビで、元総理の中曽根康弘先生が、その本を推薦してたんですよ。それでぜひ読んでみたいと思いましてね」
などと、オッサンは相変わらず、でかい声で話している。
そんでまあ、「こちらでございます」などと、かわいらしい司書が示す先には、ぶああああああーっと、書棚ぜんぶ司馬遼太郎
おっさん、急に元気がなくなる。
坂の上の雲』は文庫本で全8巻。
さて、そのオッサンがどうするか、
おれは斜め後ろから見ていたのだが、おっさんは、文庫の1巻を手に取り、パラパラとやり、そのまま書棚に戻すと、何事もなかったかのように、帰っていきましたとさ。
一冊くらい、借りていけよ。
歴史が苦手という人も、司馬遼太郎の小説は、中卒程度の日本史の知識があれば、さくさく読めますが、まあ、高校で日本史を選択せず、理系の大学を出た、なんて者は、いくらエリート意識があろうと、中卒程度と変わらないわけで、なまじ本人は頭がいいと思っているだけに、始末が悪い。
ロシアのバルチック艦隊を破った海軍参謀の物語を、いきなり読んだところで、バカには、何もわからないであろう。
司馬遼太郎といえば、『竜馬がゆく』ですが、これも長いので、飽きっぽい人にはどうか。かといって短編集というのも、歴史の知識がないとあんがい楽しめないものです。
それで初めて読むとすれば、つぎの長編あたりがよいでしょう。
燃えよ剣』(土方歳三
国盗り物語』(斉藤道三、織田信長
関ヶ原』(石田三成徳川家康
『世に棲む日日』(吉田松陰高杉晋作
『新史太閤記』(豊臣秀吉
歴史上、よく知られた人物が主人公であるし、戦国や幕末といった、波乱万丈の物語。
たしかに普通の小説よりは長いがこれらを読破すると、日本史の流れがわかってきて、『翔ぶが如く』や、『坂の上の雲』も楽しめるでしょう。