清く貧しく美しく

映画『フラガール』をテレビで。

これはどうみても、蒼井優より、その友人・早苗役の徳永えりの映画だろ。

オープニングショットでフラガール募集の貼り紙を見つけ、蒼井優をさそってレッスンを始め、いよいよ舞台デビューという直前、父の猛烈な反対で断念させられ、トラックに乗って北海道の炭鉱町に移住させられる。

友人たちが華やかなショーダンサーになる中で、極寒の北国で、幼い弟妹のために、ひとり泥まみれになって働き、やがて体を壊して死んでいく…(にちがいない)
運良く生き延びたにしても、ススキノに出て身を売るしか道がない…(にちがいない)
貧しく孤独で悲しい人生。

この少女の不幸を描いてこそ、日本映画ではないか。努力すれば必ず夢がかなうなどという、ハリウッドエンディングなど、くそくらえ。

ところが、公式サイトのキャスト紹介でも、徳永えりさんの顔写真さえない。しずちゃんよりよほどいい演技をしているのに、助演女優賞さえ、もらわなかった。批評家は、いったいどこを見ているのか。

思えば『花とアリス』で、蒼井優の演技は、主役の鈴木杏を食っていた。その優ちゃんも『フラガール』では、徳永えりに負けた。若手女優は、下克上の時代か。

三浦しをんのエッセイで、「女工萌え」というのがあるのを知った。なんでも『女工哀史』、『あゝ野麦峠』のような、悲惨な女工たちの姿に「萌える」人がいる、という話だが、日本映画とは、「女工萌え」の歴史だったかもしれない。

演技派と呼ばれる女優は、みんな「女工顔」である。