蓮實重彦に目が眩んで

伊丹十三蓮實重彦は、伊丹氏の手料理を食しながら、対談するほど仲が良かったのに、映画『お葬式』のあとは、絶縁状態だったようだ。

その原因は不明であるが、蓮實重彦は『帰ってきた映画狂人』で、こう述べている。
324ページから引用

『お葬式』はちっとも面白くない。

それで、試写室の出口に伊丹さんが来ていて「どうですか」って言うから、正直に「最低です」と言って別れました。たぶん、それが彼と言葉を交わした最後だと思う。その後も、彼の作品は全部見てますよ。けれど、ひとつとしていい場面の撮れない人だったと思う。キャメラが助けてないし、あんなにいいショットがない映画って珍しいと思います。

それから、どうも劇の構造が全部面白くない。
伊丹父子、万作と十三のふたりは、作品の質とは無縁に評価されている点で同じだと思います。伊丹万作って、今見られるものでは面白いものはひとつもない。

つい最近有名な、『国士無双』の断片を見たんですけど、全く駄目だった。なぜあんなに皆が面白いというのか理解できませんでした。まったく演出のできない、いいショットのひとつもない人だと思います。

『お葬式』は、蓮實重彦の「映画史的引用理論」を、そのまま実践したような映画であったにもかかわらず、なぜかこれを蓮實先生は気に入らず、親父さんの映画まで酷評するというのには、伊丹一族に対するよほどの私怨を感じるのだが、どうもインテリの考えることはわかりません。

わからないといえば、蓮實重彦のほめる映画というのも、どこが面白いのかさっぱりわからない。もちろんこちらの頭が悪いのは承知済みだが、あの蓮實重彦がほめているのだから、どこか面白いところがあるはずとがんばって見ても、やっぱりつまらない。