日雇い

最近テレビでも、「日雇い派遣」という言葉が普通に使われているが、「日雇い」というのは、放送禁止用語だったのでは。

自主規制されていたものが、若いディレクターあたりがそうとは知らず、使っているのだろうか。「日払い」と言い換えているところもあるようだが、まあ、あの雇用形態は、日雇いでしょうな。

ひところの差別語狩りも、筒井康隆の断筆宣言以降、風向きが多少変わってきたところもあるだろうが、たぶん今時の若い者は、差別問題の歴史も知らないで、面白半分で使っている節もあるので、どこの図書館にもたいてい置いてある『全国のあいつぐ差別事件』くらいは読んで、お勉強しておきましょう。

言葉というものは、そもそも多義的な意味があるので、使われる文脈によって、同じ言葉でも、よい意味にも悪い意味にもなる。

水に『ありがとう』と書いた紙を見せて、凍らせるときれいな結晶になる。と主張する、バカがおりますが、大阪大学菊池誠教授は、こういうニセ科学に対し、きわめてまっとうに批判している。

「ありがとう」はよくて、「ばかやろう」は悪いという安直な二分法でよいのでしょうか。誠意のこもらない「ありがとう」よりも愛情をこめた「ばかやろう」のほうがいい場合もあるはず。
言葉はそれだけで切り出すべきではなく、「場面」と合わせて初めて意味を持つはずです。


巨人の星』のアニメで、星飛雄馬が、青雲高校の面接試験を受ける場面がある。青雲高校は、ブルジョアの子弟ばかりが通うお坊ちゃん学校。面接官は、飛雄馬の汚い学生服を見て、
「お父さんの職業は?」と、冷笑を浴びせる。
それでも飛雄馬は、堂々と答える。

「俺の父ちゃんは、日本一の日雇い人夫です!」
 
この感動的なセリフを、”ピー音”で消すことが、どれほど愚かなことか。

沢木耕太郎の、昔のエッセイで読んだが、沢木氏が学生時代に家庭教師のバイトをしていて、その教え子が、テレビで『巨人の星』が始まると、毎回、泣きながら見ていたという。
これもじつに美しい光景だ。

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見たことはないのだが、『アパッチ野球軍』というアニメが気になる。

ウィキペディアによると、

堂島が村の社会からはみでた不良少年たちに野球を教えていくという物語である。この村は、単なる田舎というよりは文明以前の原始人が住むようなすさまじい無法地帯であり、そこからアパッチ村と呼ばれた。

網走、材木、ハッパ、モンキー、オケラ、ダニ、ダイコン。

これが全部選手の名前(あだ名)だという。
「木こり」の子だから、材木…。
4番キャッチャー、材木…。