読売新聞のコラムより
大澤真幸「スピリチュアルブーム・新宗教第3ステージへ」
大澤氏によると「新宗教」の歴史は、次のようになります。
<新宗教>
幕末以降に誕生した宗教<旧・新宗教>
明治維新期や、戦後当初の激動期に誕生
特徴:おもに「貧・病・争」を解決する現世利益を約束。<新・新宗教>
1970年代以降に誕生
特徴:現世離脱
それで、ただいま人気のスピリチュアルというのは、直接的な現世利益を、肯定する。お金や出世、恋愛の成功などの、現世利益が、明るく肯定される。
これは、旧新宗教への回帰なのか?
そうではない。
現世利益を説くならば、現世的・現実的な活動の具体的な指針を提示しなくてはならない。たとえば、日本の高度成長を支えたカリスマ的な経営者は、時に宗教的な教祖のようでもあり、企業での労働や奉仕を宗教的な言辞で正当化した。
ところが、今日のスピリチュアルなカリスマは、恋愛の成就とか億万長者といった現世利益を到達点として支持しつつ、そこへと至る方法として、著しく非現実的で幻想的なやり方を示唆する。
たとえば、人々の間を流れるエネルギーを支配する「宇宙の尊い法則」に従おう、といったことである。
ようするに、スピリチュアルなるものは、現世的救済を求める人に、非現実な手段を、教えている、ということ。
「お金持ちになりたい」という相談者に、「祈りなさい」と言うようなものか。