となり町戦争

『となり町戦争』の作家、三崎亜記のことを、ずっと女性だと、信じ込んでおりました。
それで、TBS「王様のブランチ」でのインタビューを見て、男性だと知ってびっくり。

今年一番の、びっくり!ですよ。

だって、小説を読んでも、顔写真を見ても、”役所勤めで、春樹ファンの地味な女性”というイメージだったので。やっぱり、作者のイメージって、小説の読解に、あるバイアスを与えますね。
そんで、『となり町戦争』ですけど。

筒井康隆『三丁目が戦争です』との類似を言われていたけど、まあ、スティーブン・キングの『死のロングウォーク』と、高見広春バトル・ロワイアル』が、似ているくらいには、似ておる。でも、おれの読後感としては、個人の日常生活が、そのまま世界の大問題につながっているような、いわゆる「セカイ系」の匂いがする小説でした。

新海誠ほしのこえ』とか、高橋しん最終兵器彼女』とか。『涼宮ハルヒの憂鬱』とかね。

「偵察員」の生活を、”お役所仕事”として描く場面は、さすが作者が勤務しているだけあって、すごくリアルで、『銀河ヒッチハイクガイド』における官僚主義批判と、同じような皮肉を感じました。

女王の教室』での、福田麻由子ちゃんみたいに、「さっきから規則、規則って、そんな頭の固い官僚じゃあるまいし」と、文句のひとつも言いたくなるような。 

しかし、映画化での、江口洋介原田知世というキャスティングに、がっくり。この小説は、若者が、戦争に巻き込まれ、犠牲になるところにドラマがあるんです。こんな、おっさんと、おばはんだと、職場でも、管理職か、相応の地位だろうし、「となり町戦争」のシステムが、どういうものであるか、当然知っていなければならず、それを知らずに、巻き込まれるというのでは、たんに無知なだけ。だれが同情なんかするか。

江口洋介くらいの年齢だと、戦争を遂行する側の人間であるべきで、それが、自分の町がどういうシステムになっているか、まったく知らないなんて、バカバカしい。

主役は、もっと若いカップルでなければ。二宮和也くんあたりが適役と思うのだが。

そういうわけで。戦闘シーンのない戦争映画として、『まぼろしの市街戦』のような佳作となり得るかという、期待もむなしく、映画版『となり町戦争』が、学生の自主映画のような駄作であろうことは、観なくてもわかります。