ドキュメンタリーは嘘をつく

森達也の『ドキュメンタリーは嘘をつく』という本は、いろいろ考えさせるものがあります。この本を基にしたテレビ番組も、製作されておりまして、これがまた、おもしろい。
http://www.tv-tokyo.co.jp/literacy/060326.html

たとえば、ワイドショーで街頭インタビューをよくやってるけど、しかし、あれが世論を代表した意見かというと、そんなことはなくて、番組ディレクターが制作意図に合うような意見を選んで、放送しているに過ぎないわけです。

ドキュメンタリーも、演出によって作られているし、それが過ぎると、ヤラセなんて言われてしまう。

それを読み解くのが、メディア・リテラシーという能力です。

テレビ番組『ドキュメンタリーは嘘をつく』はドキュメンタリーとして作られたように見せながら、じつはすべてドラマ(フェイク)だった、という番組で、おれも最初見たときはショックを受けました。

10年前に蒸発した父を捜す青年が、それをビデオに撮っているわけだけど、実際にそういうドキュメンタリー作品があったと思うけど、父と子が再会して、殴り合ったりする場面が、じつは演出だった、なんて引っ掛けがじつにおもしろい。

こういう手法を、”フェイク・ドキュメンタリー”と呼ぶそうです。日本映画史の中では、『人間蒸発』(今村昌平1968年)が有名だとか。野沢尚の『破線のマリス』も、こうした映像による印象操作をテーマにしていました。最近また、こういう手法が流行っているのか。

11月18日に、NHKで、『18年目の学園祭-大人計画フェスティバル-』という番組が、あったのだけど、俳優の大沢たかおが、レポーターとして出演して、

大学卒業後、劇団大人計画に所属し、芸名は大沢蝉之介だった。阿部サダヲ宮崎吐夢猫背椿とは同期。出演作の無いまま1年半で退団する。

なんてことを、さも真実らしく話してたんだけど、番組の最後で、その設定はフィクションです、とやって、笑わせてくれました。

”フェイク・ドキュメンタリー”といえば、深夜に放送されていたホラードラマ、『放送禁止』もそうですね。

この「本当にあった心霊現象」という設定は、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の影響だろうし、まあ、おれはこの映画が怖くもなんともなくて、もう10分くらいでバカバカしくなって、見たことを後悔したのであるが。

それはそれとして、この映画の元ネタは、『食人族』なわけです。これはドキュメンタリーとして宣伝されたゲテモノ映画ですが、じつはほとんど、ヤラセ映像でして、しかし、全部が作り物かというと、そうではなくて、本当に人が殺されている映像も含まれているとか。
ヤコペッティの『世界残酷物語』なんかも、”フェイク・ドキュメンタリー”と呼べるのかな。

しかしまあ、結局は、ヤラセかどうかなんてよりも、その映像で何を表現したいのか、何を伝えたいのか、ということのほうが重要かなと思いますね。