久世光彦氏の訃報に、死を思う

久世光彦氏が、亡くなりました。
まあ、おれとしては、小説家としての久世さんにしか興味がないので、ていうか、『一九三四年冬―乱歩』を読んでファンになるまで、あまりよく知らなかった人で、テレビドラマの演出家というのは、おれの興味の外で、『時間ですよ』のプロデューサーといわれても、ハア、そうですか、というくらいのもんです。

『女性セブン』(3月23日号)
樹木希林「あのとき久世光彦さんの不倫を暴いた理由」

という記事を読んで、久世さんが若い女優と不倫関係になり、彼女を『寺内貫太郎一家』の端役に起用し、さらに妊娠までさせた。ということが過去にあったそうで、それを樹木希林が暴露して、マスコミでも騒がれたそうで、さすが樹木希林というか、久世氏もいろいろやってたんだなあ、というか。その時の女性が、今は奥さんとなり葬儀で喪主を務めていた人、と知って、へえ、なんて思ったり。
だけど、久世さんは、たいへんなインテリですよ。こういう人が、テレビという俗な世界にいるとなると、弱ったなあ、という感じになりますね。
それはそうと、久世さんは読売新聞で、人生相談をやられてまして。去年の7月のことですけど、こんな記事が載りました。

相談者は、30代の主婦。
タイトル「自分が死ぬことがこわい」

自分がいつか死ぬということがこわいです。
人は年を取っていつか死ぬと頭ではわかっています。
しかし、今ある気持ちや心、魂がなくなるということがどうしてもわかりません。
<中略>
変な相談かもしれませんが、死後について心の中を整理しておきたいです。
そうしないとこわいだけで終わってしまいます。
安心して死ねない感じがします。

そういう相談についての、久世光彦氏のお答え。

相談された私の方が、あまりに思い悩むことがあなたと同じなので、驚き、また戸惑っています。
70歳の私も今、かなりリアルに<死>を恐れているのです。
思い出してみれば、私は15歳のころも<死んだらどうなる?>という恐怖に、毎日震えていました。そして半世紀も経ったこのごろ、また眠れない夜を過ごしています。
つまりあなたの恐れは、人間なら誰もが落ち込む根源的な<暗くて深い穴>のようなものです。
結論を申します。この問いには答えがありません。
どんな本を読んでも、どんな宗教にすがっても、この永遠の<謎>は解けることはないのです。
救われたと思ったにしても、それは儚い一時の錯覚で、すぐにまた同じ穴に落ちることになります。無責任なことを言うようですが、自棄になって諦めるしかありません。
人間に生まれてしまったのが運の尽き、大笑いして忘れることです。
すると、明日が見えてくる。不思議ですね。

いやあ、絶望的な答えだなあ。70歳になってもボケもせず、死が怖いってのは、やりきれねえなあ。明日なんて、見えてこねえよ。
この記事は、いつか紹介しようと思って、切り抜いておいたのですが。
気づけば、今日になり、久世さんも亡くなっていました。

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