人の成功物語を、信じるな

谷岡一郎氏の『ビジネスに生かすギャンブルの鉄則』という本を読んでいたら、けっこうおもしろい記述がありまして。

谷岡氏は、ぼくの好きな社会学者の一人でして。
数学理論とか、確率とかの話にめっぽう強いところが、気に入っております。
もし、ギャンブル依存症で苦しんでいる人がいたら、谷岡氏の本を読むといいと思います。

競馬、競輪、パチンコ、などのギャンブルが、いかに客が儲からないシステムか。
ちゃんと理詰めで説明してくれますから。

ちなみにぼくは、あんなものは時間のムダだと思ってるんで、一切やりません。

『確率・統計であばくギャンブルのカラクリ』(講談社ブルーバックス
『ツキの法則』(PHP新書)
などが、おすすめです。

それで。

たとえばここに、128人の経営者がいるとします。
これから、イチかバチかの社運をかけたプロジェクトを行うとします。

「プランA」か、「プランB」を選ぶとします。

半数の64人は「A」を選び、残り半数の64人は「B」を選びました。
結果的に、「B」が勝ったとします。

負けた人の会社は、倒産か業績悪化。

さて、勝った64人が、もう一度、二者択一を行います。

そこでまた勝ち残った32人が、またまた二者択一を行って、
最後の一人が勝ち残るまで、続けるとします。

この結果は、どうなるかというと。

5連勝する者が4人、6連勝するものが2人いて、一人が7連勝します。

じゃんけんの勝ち抜き大会と同じですね。

この、7連勝した経営者というのは、
たとえば、松下幸之助や、本田宗一郎のような方々ですね。

社運をかけた決断が、一生のうちにそれほどあるとは思えませんが、
重要なのは、

「何回も続けて正しい決断をする経営者は、必ず存在しなくてはならない」

という点です。

じゃんけんの勝ち抜き大会でも、
ずっと勝ち続けている人が、必ず存在します。

同じように、ずっと負け続けている人も、存在するわけです。

つまり、一個人の人生の中では、奇跡的に思われることでも、
大勢の人間の中での確率を考えると、そういう奇跡は確実に起こっているのです。

まあ、確実に起こることを、奇跡とは言わないですが。

それで。
世の中には、128人どころか、それこそゴマンと経営者がいるわけです。

ようするに、放っておいても、連続して正しい決断をする人は、いっぱい現れるわけです。

5連勝もすれば、その人は経営のエキスパートとして皆から尊敬され、本を書く人もいます。
「私はこうして成功した」と。

しかし、その成功物語には、じつは「偶然」という要素も、かなりあるのです。

じゃんけんで連勝するのに、何の努力も才能も、要らないように。

だから。
まあ、そんな人の本を読んでも、あんまり意味がないよ、と。

ぼく自身は、あの手の成功本だとか、自己啓発本だとかいうのは、まったく読まないです。
時間と金のムダだと思っているので。
そういうのを読んで、感動している人も、愚かだと思いますね。

谷岡一郎氏の本を読むほうが、よっぽどためになると思うんだけど。

それだけです。