映画

「愛のむきだし」的なもの

一部で評価の高い映画『愛のむきだし』を見たのだが、期待はずれだった。 おもしろかったところといえば、敬虔なクリスチャンの親子がそれゆえに罪を犯し、神の名のもとにその罪が簡単に赦される、という展開だけだ。ただ、神父が「懺悔」という言葉を使うこ…

モルとかケラとか

タナダユキ『モル』 2001年ぴあフィルムフェスティバルのグランプリ受賞作。『百万円と苦虫女』で第49回日本映画監督協会新人賞を受賞した監督のデビュー作。 ということで見たけど、どこがいいのかさっぱり。品がなくて、さわがしくて、安っぽくて、学生の…

企画はパクリ

ジョージ・クルーニー監督の『コンフェッション』を見る。 チャック・バリスが書いた自伝が原作で、それを『マルコヴィッチの穴』のチャーリー・カウフマンが脚色している。自伝とはいえ、テレビ番組のプロデューサーをしながら、じつはCIAの秘密工作員で…

革命以前、革命以後

若松孝二がむかし撮った『赤軍派-PFLP 世界戦争宣言』のDVDが出てたので、レンタルしてくる。完全なプロパガンダ映画。だが、そこがいい。少なくとも『実録・連合赤軍』なんかよりずっといい。時間も短いし。 『実録・連合赤軍』というのは、ほんと、くだら…

共産主義的、性的人間

DVDで『コミュニストはSEXがお上手?』というドキュメンタリー映画。 かつて分断されていた東西ドイツのセックス事情を調査したもの。それによると、西よりも東ドイツの方が性的に進んでいたという。 西ドイツは資本主義で、性産業は氾濫しているし、自由…

ブルークリスマス

今年のクリスマスは忘れてた。もう終わったのか? 気づかなかったなあ。今年のクリスマスっていつもより短かったんじゃねえか。なんてことを例年書いて、年越しをするわけでありますが。 映画『ブルークリスマス』 監督は岡本喜八。というよりもこれは脚本・…

ふしぎな映画会社

『週刊新潮』(7月16日号) 映画「斜陽」の脚本家は男なら誰でも知ってる元有名AV嬢 という記事を読む。 へえ、あの人がねえ。たしか学生時代はソフトボール部だっけ。ずっと前そんなインタビューを読んだことがある。ああ、おれも男だな。 それよりも、彼…

生涯に一作か二作

ロイ・アンダーソン監督の『散歩する惑星』というのは、ふしぎな映画だった。 みょうに間合いが長くて、おかしな人物がいろいろ出てきて、それぞれのエピソードがなんとなくつながっていて、映像に独特のふんいきがあっておもしろかった。 CGを一切使わず…

殺人観光ツアー

今村昌平の『復讐するは我にあり』をDVDで見たんだけど、これの付録映像に、なんか観光ガイド風のビデオが収録されていた。 若い女性レポーターが案内役となって、「この旅館で、映画の撮影が行われました」なんて紹介するのね。映画のロケ地や、作品の舞…

若い時からおっさん

笹野高史という俳優は、「ワンシーン役者」を自称するだけあって、じつにたくさんの映画やテレビドラマに出ている。とはいえその名前では、あまりピンとこないだろうが、顔を見ればたいてい「ああ、あの人か」とわかると思う。 先日、『異人たちとの夏』とい…

映画はハウス

大林宣彦監督の『HOUSE ハウス』を見ました。 いやあ、おもしろかった。CGもなかった時代にどうやってあの映像を撮ったんだろうというような、凝りまくった映像の連続でとにかく楽しい。この作風を受け継いでいるのは『下妻物語』か。 それでDVDに収録…

これも愛、あれも愛、ってな恋愛映画

愛だの恋だのというのは、じつのところよくわからない。肉体的に考えるならただの性欲であろうし、観念的に考えたところで精神異常の一種だろう。 とはいえ人を好きになったりするのは、なかなかいいものだ。 いみじくも、竹内まりやが述べているように、 「…

動物愛護の盲点

映画『ゴッドファーザー』で、マフィアが映画会社のプロデューサーを脅そうと、馬の切断した頭部を彼のベッドに置くシーンがある。 あれは本物の馬の頭を撮影に使っている。 そのことで抗議が殺到したという。 コッポラ監督は、DVDに収録されている音声解説…

おまけ

ウィル・スミス主演の『アイ・アム・レジェンド』をDVDで見ました。 いやまあ、これがまたひどい映画で、原作ぶちこわし。 ウィル・スミスがあいかわらず独り言をいいながら、犬を連れてうろうろして、怒ったり叫んだりしながら、ラストはまたしてもナレ…

ウィル・スミスはうるさい

テレビで『幸せのちから』という映画をやっていたので、どうせつまらなそうだったんで部屋を掃除しながら見たんだけど、やっぱりつまらなかった。 ホームレスから億万長者になる話というので、まあ前半はいろいろ悲惨なことが起こって、その対比で後半はぐっ…

男の映画

ロバート・アルドリッチの『北国の帝王』が、ついにDVDで発売とのこと。 20世紀フォックスジャパンのサイトに詳細があるのだが、その宣伝文句が笑える。 ●主要キャストに女性が皆無という、これぞまさに“男”の映画。(しかし若い女性の腋毛剃りや、川での…

革命家は愛され、軍人はきらわれる

客「チェ・ゲバラがまた人気のようだね」 主「映画はすごかったね」 客「見てきたのか?」 主「キューバ革命成立後、ゲバラが日本にくるんだ。そしてここでもまた革命を起こすために、学生運動の指導者となる。東大安田講堂を占拠したのも、よど号ハイジャッ…

バカ正直

社会保険庁にも厚労省にも、まじめな職員はいる。 たしかにその通りである。 暴力団でもない限り、組織のメンバー全員が悪人などということはない。しかし、トップが悪人であり、強大な権力を持つとき、その組織は腐る。独裁国家が、そうである。たとえ独裁…

舞妓はーん

映画『舞妓 Haaaan!!!』をみた。宮藤官九郎というのは、『メタルマクベス』の記者会見で、シェイクスピアの『マクベス』を読んだことがなかった、と語っているのを見て、まあそうだろうなと思ってはいたが、おれのなかでは、クドカンの株は暴落した。 以来、…

ヤマザキ、ポニョを撃て

サヨクのみなさんに、お知らせです。渡辺文樹監督の新作映画、『天皇伝説』、『ノモンハン』の上映が中止になりました。『靖国 YASUKUNI』の上映中止で大騒ぎしたみなさんは、とうぜん、今回も抗議の声をあげてくれるものと、期待しております。しかし、この…

靖国、氷雪の門、腹腹時計

月刊『紙の爆弾』6月号 「言論を封殺したのは果たして誰なのか?」 映画『靖国 YASUKUNI』に街宣をかけた右翼の言い分 街宣右翼へのインタビュー記事。映画『プライド・運命の瞬間』に対し、左翼団体は、「戦争を美化するな、靖国を美化するな」と抗議し、上…

敵中横断三百里

黒澤明の脚本というので(小国英雄との共同脚本)、映画『敵中横断三百里』(監督・森一生)をDVDで。これは山中峯太郎の同名小説の映画化で、原作は日本の冒険小説のさきがけとして有名。 期待したのだが、じつにつまらない。 古臭いし、サスペンスもな…

済州島からパッチギ

『パッチギ! LOVE&PEACE』を見た。 あいかわらず漫画的な演出に辟易するが、井筒和幸はけっきょく、『仁義なき戦い』を撮りたいんだろう。 笠原和夫は、「わが『やくざ映画』人生」のなかで、こんなことを書いている。 (映画『櫻の園』のプロデューサーに対…

顔をぶたないで、私女優なんだから

ギャオで映画『Wの悲劇』薬師丸ひろ子主演の映画で、一番いいのがこれ、という評判は知っていたのだが、長らく見ないでいた。好きなアイドルが、キスしたり抱き合っているのをたとえ映画であろうと見たくないと考えていた純情な男子だった自分のことを、ほ…

日は沈む

DVD『戦争と人間』をレンタルしたあとに、中古ビデオ販売コーナーをのぞいたら、『落陽』のビデオを見つける。この映画は、『底抜け超大作』(映画秘宝・洋泉社ムック)で、橋本忍『幻の湖』、神代辰巳『地獄』、小松左京『さよならジュピター』なんかととも…

昭和は長い

山本薩夫監督『戦争と人間』 DVDで全3巻全部見ると9時間半(笑) 満州事変前夜から、ノモンハン事件までの大河ドラマ。しかし、楽しめるのは第二部までで、第三部はもう、反日プロパガンダ映画。おれは昭和生まれだけど、戦争にも、大阪万博にも行ってない…

うろん

『UDON』という胡乱で魯鈍な映画を、をテレビで見たけど、あの製麺所の主人は、毎日、学校と病院に麺を運んでいるらしいけど、香川県の小学生と入院患者は、毎日、うどんを食ってるのだろうか。すごい土地だな。もうちょっと脚本がどうにかならないかと…

若きヒトラーの肖像

メノ・メイエス監督『アドルフの画集』『ヒトラー 〜最期の12日間〜』というのが、長くて退屈な映画だったので、なんかヒトラーを人間的に描いていて、抗議されたらしいけど、史実に忠実であることと、人間性を描くことは、別のことだと思うのですが。それで…

それでも誰かがやっている

映画『それでもボクはやってない』は、レンタルで見ればいいやと思ってたのだが、早くもテレビに登場って。早すぎないか。もうフジテレビが絡んでいる映画は、映画館で見なくていいな。再来週には駄作と評判の『UDON』もやるみたいだし。しかしまあ、『…

氷点とロボコップ

三浦綾子の小説を映画化した『氷点』(山本薩夫監督)を見たら、意外とおもしろかった。誘拐犯に娘を殺された夫婦が、キリスト教の「なんじの隣人を愛すべし」という教えを実践しようと、その誘拐犯の娘を養女に迎え、育てる。信仰に篤い人間のほうが、時と…